ベルトラン追憶


《 探し求めたその場所で。 》


何をしても、つまらない。何でも簡単に出来るから。
何をしても、退屈だ。難しいと思ったことがないから。
人間でいることはつまらない。
エンゲージをしても、喧嘩をしても、いつも僕のほうが強かったし、
悪い事をやって追いかけられても、いつも完璧に逃げる事が出来た。
もっともっとスリルが欲しい。
もっともっと怖がってみたい。
そう思ってもそれが出来ないから、毎日毎日・・・退屈だ。


今日もふと気付けば、人通りの多い街を1人、ふらふらと歩いていた。
もちろん目的なんて無い。
どこに行こうが、その日の終わりに行き着いた場所で眠るだけだよ。
・・・僕って、何のために生きてるんだろう?
そんな事を考えながら街をつっきった僕は、いつのまにか広い草原に出ていた。
僕はため息をつくと、やわらかい草の上に寝転んで目を閉じた。


「おやおやクポ」


・・・しばらく時間がたったとき、少し離れたところから、聞き覚えの無いモーグリの声がした。
僕は目を開けて、その方を見た。


「今日は雨が降るらしいから、どこかに入ったほうがいいクポ〜」


・・・黄色いモーグリが、僕を見て立っていた。
街で買い物してきたのか、大きな紙袋を持って重そうだった。


「・・・別に」


体を起こしながら、僕はちょっとうつむいて、思ったことをそのまま口に出した。


「別に行くとこなんて無いし、帰るとこだって無いから、・・・このまま雨に濡れたっていいよ」
「・・・どこかのクランメンバーさんじゃないクポ?」
「ちがうよ。・・・まぁ入ってたんだけど、やめちゃった。どこのクランに入っても、つまんなくて」
「クポ〜・・・」


このモーグリ、僕が狩人の格好してるから、どっかのクランの人だって思ったんだな。
まぁ、そう思うのが普通なんだろうけど・・・。


「クランの人たちは、みんな良い人だった。ただ、仕事が簡単すぎて・・・
自分で言うのもなんだけどさ、僕、器用なんだよね。何をしても、簡単にこなせる。
だから、つまらない・・・やりがいがなくて、・・・やめちゃった」
「なるほど、恵まれた者だけの、不幸クポ」


・・・ふぅん。話がわかるね。でも、恵まれた者ってのはどうかなぁ。


「・・・君は?」
「クポ?・・・モグはあるクランのリーダークポ。いずれ、最強になるクランの」


僕はしばらくそのモーグリを見ていたけれど、そのうち急にふきだして、笑いながら言った。


「最強かぁ。そりゃいいや。ってことは、息つく暇も無いくらい忙しいんでしょ?」
「まぁ、そうだクポ。周りのクランメンバーより強くなる事さえ、難しいクポ〜」
「・・・僕を入れてくれる気は無い?君についていくよ。そして誰より、強くなってみせるさ」


僕とそのモーグリは、お互いに強気な目を合わせて、笑った。
そうして僕は、モンブランのクランメンバーになった。


・・・今は、退屈だなんて思わない。


どんどん引き受ける仕事は、いつも最高に荒っぽくて、いつも命がけで、僕よりずっと強い人たちと、いつもいっしょにクリアする。
はぁ、なんて忙しいんだ。
でもたぶんこれが、僕の求めてたものなんだろうな。
今考えれば、今まですっごい無駄に生きてきたかも。
その分取り戻すために、1日1日をうんと忙しく生きてやるさ。


人間であった日を後悔したあの日に戻らないように。


僕がそう自分に約束したのは、異世界から不思議な子がやってくる、1年ほど前のこと・・・


END