ピート追憶


《  金色の太陽  》


3年前 ジェラワット砂漠


金色に輝く太陽がようしゃなく照りつける。巨大な砂の山が、熱風と共に形を変える。
やっぱりこれは失敗だった。砂漠は1人で入るところじゃない。
まさか砂漠に逃げたとは思わないだろう、なんて考えが甘かった。
逃げ込んだは良いが、出られる気がしないんだ。
あぁ、オアシスの幻影がみえる...あれは本物か?...
出口が見えない代わりにはっきりとしているのは、もう1歩も動けないという事だった。
景色がゆらいで、目の前がゆっくりと暗くなっていく。
畜生、まさか砂漠の真ん中で死ぬなんて予想外だった...
でももうこれで、誰かに追われることもない...


「起きろよっ!起きろ起きろ起きろ!おーーい!」
ずっとずっと遠くの方から、誰かが叫んでいる...気がする。
「えいっ!」
「...ぅあァ!」
突然、頭に打撃をくらって私は反射的に眼を開けた。無数の火花のあとに眼に飛び込んできたのは、昼間の炎のような空とはまるで正反対の、冷たく澄んだ星空だった。
「大丈夫か!?自分が誰なのか、解る!?」
声のするほうへ視線をずらすと、1人のモーグリが複雑な顔をして立っていた。その足元には少し大きめの石が、砂にめり込んだようになって転がっていた。
「えっと...夕方くらいに倒れているの見つけて...その...助けようと思って...でも全然起きないから、そのう......石で殴ったの。ごめん。強すぎた」
モーグリはそう言うと、そばに来て座った。
「あ...あぁ...ありがとう...」
わたしは状況を理解してそれだけ言った。それだけしか言えなかった。視界が眼の端から暗闇に包まれ、意識があっという間に遠のいて、私は再び眠ってしまったのだった。


朝になって意識がはっきりしてから、私はあたりを見回した。
昨日は暗くて解らなかったが、すぐそばに大岩があって、私はその影になっている所に寝かされていた。
足元の方に小さな荷物が置いてある。
危なかった所(多分)を助けてくれたあのモーグリは...いない。


「おはよう!あっ、起きれるようになったんだね!」


いないと思ったら、岩影から走って出てきた。
これも暗くて昨日は気が付かなかったことだが、そのモーグリは金眼で、モーグリであることを主張する羽とポンポンが無かった。


「僕は砂漠の銃士スペングラー!元気になって良かったよ、本当」
スペングラーと名乗ったモーグリはそばに来ると、元気よくそう言った。
「ありがとうスペングラー...私はピートだ」
スペングラーは背負っていた銃を降ろすと、
「ほんとに、僕の石のせいで死んじゃったらどうしようかと思った」
と言って、楽しそうに笑った。


私はあるクランから逃げ出して、追われる毎日を送っていた。
森に入ったり、人ごみに紛れたり、無法地帯の家々に隠れたり。
そしてついに見つかって、一緒に逃げてきた親友と別れてしまった。
1人になった私はさんざん迷ったあげく、砂漠までは追ってこないだろうと思って、3日前にジェラワットに入った。
で...よく考えないで歩いたので昨日死にかけた。情けないったらない...。
スペングラーもそれを聞くと呆れたように、
「ピートはなんていうか、度胸があるね...」
と言って、やっぱり笑った。


スペングラーは「モーグリらしくない」モーグリだった。
身長や顔つきはモーグリだが、羽も無ければポンポンも無く、毛色も薄い黄色で、なにより眼が金だった。
これまでいろいろなモーグリに会ったが、スペングラーのようなモーグリは初めてだった。
正直、クポクポ言わないモーグリがいるとは思ってもみなかった...
まぁそんな訳でスペングラーもモーグリ族のなかで浮いてしまったため、銃の腕を鍛えて、砂漠を旅するようになった...ということだった。
スペングラーも私もたった独りで、行き場の無いもの同士だったんだ。


私はスペングラーについて旅することにした。
スペングラーが言うには、ジェラワットはただ突っ切るだけならそうかからないが、探ろうとするとどこまでも広くて、誰も知らないような美しい場所もたくさんあるという。
「ピート、僕きれいなところとかいっぱい知ってるからさぁ、全部教えてあげるね」
また炎のようになった空の下を、私たちはゆっくりと歩く。
かわいた砂の大地に、2人の足跡だけがえんえんと続いた。




to be continued...